大学時代、鞄にはいつも「きらきらひかる」が入っていた
特別お題「青春の一冊」 with P D MAGAZINE
正確には、高校生から大学5年間、鞄にはいつも江國香織さんの「きらきらひかる」が入っていた。
あの頃の自分にとってはお守りのように、「きらきらひかる」の文庫本を一冊は持ち歩いていたし、フラリと入った書店で見つけると、つい手にとって買っていた。
そんなことをしていたせいで、多い時には7冊くらい手元にあったと思う。
暗記するくらい読んだ、と言えたらいいけど、実際は何度読んでも初めて読んでいる気分で、ふいに覚えているのを思い出して、安堵したりもした。
今思えば、私はこの本をひとつの定点にして、何かを量っていたんだと思う。
20ぐらいまでは、表面的にはともかく、内面はぐらぐらだった。情緒不安定とまでhしかなくても、自分でもヤバさは感じていた。
それは年齢的な不安定さだったと思う。
「きらきらひかる」を読んで、登場人物の誰かに共感したとか、慰めになったとか、そういうワケじゃなく、ただ本という物質の安心さと、活字を追える安らぎと、江國香織さんの言葉が好きだった。
今でもそれは変わらないけど、あの時ほど縋ってはいない。
青春の一冊と呼べる熱量はないけど、確かに江國香織さんの「きらきらひかる」は、一時期の自分にとってかけがえのない本でした。